
「馬(ポニー)から犬(ビクター)へ」。デビュー17年目にしてレコード会社を初移籍したGRAPEVINEが、待望のニューシングル『Empty song』を発表。新曲にかいま見る新境地とその皮肉めいたタイトル、予想外の新ヴィジュアル、15年ぶりとなるくるりとの競演「MUSIC COMPLEX 2014, winter~supported by uP!!!」など、さまざまな角度から田中和将、西川弘剛、亀井亨の3人を直撃。
ーー移籍第一弾シングル『Empty song』がリリースされる前にまず、先に発表された新しいアーティスト写真にみんなが少しざわつきましたよね。「スーツ?! 着せられてるの?!」と。
一同:着せられてますよ(笑)。
西川:これ履け、これ着ろと言われるがままでしたからね。しかも何ひとつ疑問にも思ってない(笑)。
田中:ざわつくまでもなく容易に想像つくでしょ? まぁ、曲は別ですけどね。
西川:でもそれは移籍前も同じですからね。
ーーとはいえ、発表されたシングルのタイトルも『Empty song』でしたから、これはもう、やけくそなのかとひるみました。
田中:わははははは。
亀井:音楽的にも着せられた感が出るんじゃないかと?
ーーそう。移籍を機に、バインが今風のベタなことをさせられるんじゃないかと。
田中:エレクトロとか? もしくは速~い4つ打ちの、ドッチー♪ドッチー♪ドッチー♪みたいな曲とか(笑)。
ーーそこまでやるならむしろ聞いてみたい。
田中:絶対やらへん。意地でも(笑)
ーーだけど完成した『Empty song』を聞いて、皮肉もありつつ、今後も音楽をやっていく決意を感じる前向きでフレッシュな1曲だったので、移籍はむしろいい機会だったのかなと思ったんです。
田中:移籍第一弾ですし、リ・スタートにおけるむき出し感みたいなものは出ていた方がいいだろうなと思いながら歌詞は書いてましたね。曲も……当然新たなA&Rの方と初めて作業をするわけですから、お互いにいろいろ話をしながら作っていったわけなんです。
その時に、せっかく移籍第一弾だし多少アッパーというか、ロックっぽいガツンとした手触りのものを作りましょうよ、ということになったんですが、僕たちのストック曲の中にそういうものがあまりなくて。じゃあ相談しながら新たにジャムって作っていきましょうよ、という流れで作っていった感じですね。
ーーもし移籍がなければ、バンドは違う方向性を追求し続けていたかもしれない?
田中:違う方向というか、特別次に何をやるか? みたいな具体的なヴィジョンを持ってやってないバンドなんで、どういう曲が出来るかでどっちに進むかが見えて来る。ただ今回の曲に関しては、目論み通り出来るかどうかは別として、「こういうものを作っていきましょうよ」というやり方にトライする、というとこから作っていったんです。
ーーキャリアも長いバンドだし、曲の幅もすでに結構広いわけですから、「アッパー」と言われても今さら……という戸惑いもあったんじゃないですか?
亀井:まぁ、そういう話にもなりましたよ。だから、「このバンドのこういう曲のイメージはどうですか?」とか、結構そういう具体的な話もしながら作っていきました。もともと移籍前はそういうことを全然言われなくなってたんです。だから好き勝手にやってたんですけど、今はA&Rの人が結構意見をいろいろ言ってくれるんで、そういう人がいてくれるっていうのは面白いですけどね。わりと人の意見は聞く方なんで、うちのバンドは。
田中:だから何か言ってもらえた方が、じゃあトライしてみましょうかってことになるし、非常にありがたい。実際は、“自分らのやりかた”みたいなものもあるんでしょうけど、放っておいたらそうなりますよっていうだけというか。
亀井:聞く耳を持たないわけではないですよってことですね。
ーー新たな試みや提案に対して、「無理です」とは言わない?
田中:うん。僕は一応、「言われれば何でもやりますよ」とは言っときました。
ーー確かに、「club circuit」初日の夜に公開された『Empty song』のミュージックビデオでも、GRAPEVINE初の“お芝居をする田中和将”が目撃できますからね。
田中:ああ、初めて芝居をしましたね。
西川:ただ、ビデオの中で田中くんのストレッチャーを押す役を、「西川さん、やりません?」って言われた時だけは僕、「それはイヤです」と言いましたけどね(笑)
ーーそこはきっぱりと(笑)。じゃあ、演奏面での変化は?
西川:移籍は重大なことですけど、音楽においてはさほど重要なことではないんですよ。新しいスタッフの方と話をしたりすることがきっかけでそういう曲が出来てくることもありますけど、新しい何かを切り開くために音楽をやってるわけではないんで。だから、演奏面は従来通りやってました。