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バンドを続けていると、幸せな瞬間って訪れるんだなっていうことを噛み締めながら、とはいえ負けないぜっていう気持ちでは挑もうと思っています。(はっとり)


──そういうことをできる環境も作ってきたということですね。


田中:おかげさまでそれが許されてきたところはあると思いますね。


はっとり:それは僕らにとっては希望ですよね。GRAPEVINEやくるりとか、90年代初頭にデビューしたロックバンドが、好きなことを好きなようにやってくれたおかげで、許されていることもたくさんあると思うので。すごく、希望であり自信になるんです。今の話を聞いて、俺らもそのスタンスでいいんだろうなって吹っ切れることができるというか。最近は、好きなことをやれているので。敢えて変なアレンジ、音色を入れてみるとか、こういうことをしたかったからやるとかができるようになってきたというか。


田中:うん、いいと思いますよ。


はっとり:それは幅広さを見せたいという、ちょっとした虚勢もあると思うんですけどね。若いくせにやるなって思われたいっていう思いからやってるところもあるというか。


田中:それは僕らも最初の頃はありましたね。背伸びしている感覚というか。


はっとり:デビュー当時って、田中さん幾つだったんですか。


田中:1997年デビューで、当時24歳くらいやったのかな。で、周りはそれこそマンチェスター・ムーヴメント以降のオアシス、ブラー、あとはレッチリみたいな時代で。オアシスのモノマネみたいなバンドは周りに多かったんですよ。なので、ほんまは好きなんですけど「オアシス嫌いです」みたいなことは言うてましたね(笑)。どちらかというと、もうちょっと渋いポール・ウェラー・ファミリーのように見られたいなというか。


はっとり:達観してるって言われませんでした?


田中:よく老成してるという言われ方はしたんですけどね。確かに音楽の好みは渋めだったと思うんですけど、やっぱりそのあと見返してみると、全体的に若いですよ。アレンジとか音楽的には老けていたかもしれないですけどね。



──だからこそ今のポジションを作り出せていたのかもしれないですね。


田中:そうですね。でも自信があるようなないようなという感じでしたよ。いつの間にか、いろんなことをしたくなりましたね。あとは出会いが大きかったと思いますね。例えばプロデューサーであるとか。うちの場合はメンバーが脱退して、サポートにふたりに入ってもらってからの方がむしろ長くなりましたけど。そういうふうに周りの方々に新しい空気の入れ替えをしてもらっている。多分、同じメンバーでずっとやっていたら、煮詰まっていたんじゃないかなという気がしますね。


はっとり:勝手ながら共通点というか、僕らはドラマーが一昨年に脱退していて。サポートでドラムが入るようになってから、新しい風じゃないですが、より自由な感じで、変なこだわりがなくなっているんです。そういうタガがいい感じに外れて。弦楽器入れようというタイミングにもなったし。


田中:いいことだと思うんですよ。ちょっと考え方がちがう人が入ってくるとか。最初に入ってきてくれた時点では第3者の視点で見てくれているわけですから、刺激になりますよね。プロデューサーなんかはもちろんそうで、いろんなことを教えてくれますしね。自分たちがやったことのないアイディアだとか、聴いたことない音楽を教えてくれたりするので。そういうのは勉強になってきましたね。


──なるほど。


はっとり:ええと、まだまだ聞きたいことがあるんですけど。昔、何かのインタビューで読んだんですが、歌詞は仮歌のときに適当な英語っぽいやつで入れて、それに日本語をはめていく方法だと読んだんです。今もそうなんですか。


田中:今もそう。そのやり方しかできないですね。そうじゃないの?


はっとり:僕も一緒です。


田中:そうでしょ。そうしてる人の歌やもん(笑)。


はっとり:でも最近、変えてきてはいるんですよ。韻を踏むのを我慢して、もっと言葉の方を優先してあげることがあったり。聞こえ方の滑らかさを優先すると英語が優勝なので。聴いてきた洋楽の雰囲気で、仮歌を歌って。でもそれにすごい引っ張られるというか。そこで、Aメロを書くのに5時間かかってしまうとかもあるんです。この母音に当たるうまい言葉が見つからないとか。そのあたりはどうなんですか。


田中:俺は逆にそこまでこだわってないんですよ。仮歌はほにゃらら英語で歌っているんだけど、ここだけはこうしたいなっていうポイントがいくつかあって。それ以外はちゃんと、ストーリーを組み立てていくけどね。


はっとり:そのインタビュー記事では、仮歌の音と日本語がハマったときがあまり違和感がないっていうのがあったんです。


田中:うん、違和感はないと思う。自分のなかで鳴ってる音を仮歌で歌ってるからね。でもその仮歌を歌うときもちょっと意識しながら歌うんだよね。あまりにも“ぽく”しすぎると、幅が狭まると思って。ここは平坦にしておこうって歌ったりもしてますね(笑)。


はっとり:余地を残しておくんですね。


田中:仮歌の中でもバリエーションを作っておいて、アイディアのとっかかりになるように作ってるかな。


はっとり:田中さんの歌詞がすごいのは、そうやって音から先に作っているのに、歌詞だけを読んでも詩のようないい言葉のハマり方をしていることで。じつはなんの意味もないのかなっていう部分も、深読みしちゃったりするんですよね。例えば、「スカイライン」の“豆料理食う”とか。


田中:そうね(笑)。“豆料理食う”に意味はないよね。


はっとり:「放浪フリーク」の“宿題終わったっけ”、とかも思いつきですか?


田中:自分のなかで多分、その曲の景色を描いているんだと思うんですよね。夏っぽい曲だったとしたら、夏ワードが必要だったりするんですよね。それで宿題とかが出てきたりとか。豆料理食うとかも、豆料理食うという言葉に別に意味はないんですけど、なんとなく曲がカントリー調なので。その土地を疾走するときに何を食うかっていう話からの連想とかで。


はっとり:(笑)。アレンジに引っ張られて、歌詞も出てくるような。


田中:そうそう。イメージだよね。この曲のイメージでどんな景色が見えていて、その景色のなかからどんなワードを持ってくるかっていう感じですかね。


はっとり:今、自分がボーカルだったら絶対に聞かれたくないことを、ズバズバ聞いちゃってます(笑)。


田中:はははは(笑)。そうね、俺もこんなネタバラシしたことない。



──ひとつひとつ紐解けば、違和感はあるかもしれませんが、それが歌になったときに深読みさせてくれる面白さは、音楽ならではですね。


はっとり:そうなんです。しかもさっきの話でいうと、宿題っていう言葉がパッと入ることで、現実的な歌になるっていうか。いい感じに拍子抜けもするんです。シリアスな曲のなかに、そういう言葉がポンと入ると身近なものになるんです。


田中:それははっとりくんの歌詞を聴いていてもよく思う。僕もそこは大事にしていて。ユーモアというか、ナンセンスというかね。肩すかしな感じや、脱力する言葉をわざと選んでシリアスな曲にブチ込んだりっていうのは、常套手段として使ってますね。


はっとり:とくにGRAPEVINEに出会ってからは、僕はそこはいちばん大事にしています。照れ隠しな気もしちゃうんですけどね、あまりかっこよく決めすぎないかっよさっていうか。


田中:まあ、照れ隠しといえば照れ隠しなのかもしれないけど、そういう毒っぽいもの、皮肉っぽいものは絶対に必要やと思うんですよね。逆に、めちゃくちゃかっこいい曲で、めちゃくちゃ真面目にかっこええ感じの歌詞を書いてる人の曲を聴くと──むしろそういう曲の方が多いんですけどね。逆に、爆笑しながら書いてんちゃうかくらいに思ってしまうかな。


はっとり:それについては僕は何もいえないです(笑)。


──話も盛り上がっていてライブ当日が楽しみです。最後に、今回の初のツーマンについて、それぞれ意気込みを聞かせてください。


田中:楽しみですよね。僕はまだライブは観たことがないので、ついに観れるのが嬉しいですし。あとは、会場の横浜ベイホールは音がいいからね。


はっとり:ベイホール、初めてなんです。


田中:いいんですよ。なので、より楽しみですね。


はっとり:僕は、ライブを観てほしいという気持ちもありながら、まだ観てほしくないという気持ちもある、複雑な感じで。


田中:いやいやいや、誘っておいてそれはない(笑)。


はっとり:技術面とか音作りでは確実に負けているので、PAさんにはマカロニえんぴつの音だけ、ちょっとあげてほしいです(笑)。でも、憧れのバンドであるので、楽しみなのは変わらずで。バンドを続けていると、幸せな瞬間って訪れるんだなっていうことを噛み締めながら、とはいえ負けないぜっていう気持ちでは挑もうと思っています。



Text:吉羽さおり

Photo:高田梓

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